12.17.2010

About a boy

一人の少年がチャリでハイスピードで真横を駆け抜ける。
その瞬間、「はやっ!」っとつぶやいていた。ここから5分間のドラマがはじまる。
お陰さまでその日は一日中気分がよかったのだ。

日曜日の田舎道、友達とバスケの試合を見ようと自転車で体育館までサイクリングの途中の事だった。
収穫が終わった畑を両脇に抱える500mぐらいのストレート、iphoneで音楽を聞きながらゆっくりペダルを漕いでいたところに、彼はインコースから立ちこぎで突き抜けていった。
誰かとレースをしているようでもないのにトップスピードで飛ばす彼は、「はやっ!」っとつぶやいた三十路前男をちらっと振り返った。

無表情だった。

その顔を見た瞬間、頭の中で「カーン!」とゴングが鳴った。気づけば彼を追いかけていた。
トップスピードとはいえ小学生なので、大した速さではない。100メートルぐらいで彼の背中を捉え、そこでふと気づく。「あれ、これは大人気ないのではないか。このまま気分良くサイクリングを続けさせてあげればいいのではないか。そしてなにより変なおじさんだと思われてしまうのではないか…」
そう思うとなぜか追い抜けなくなってしまい、5mぐらいの距離で付かず離れずのレース展開に。

そこで少年Aは振り返る。「あれ、変なおじさんがつけてきてる」ということに気づいた彼は、ちらちらちらと三度見をしてからさらにスピードを上げた。まるで、うそだろ、えっ、追いかけてきてる!どうしよう!との声が聞こえてきそうな顔だった。もし自分が少年だったとしても全速前進だったと思う。だって半笑いのおじさんが猛スピードで追ってきていたのだから。

そこで迷っているうちに、かなりの距離を離されてしまった。
追いかけるか、追いかけないかちょっと迷ったが、追いかけることにした。追いかけなかったらこのまま変なおじさんで終わってしまう、それはいやだ。

チラチラと振り返る少年は逃げに逃げた。
しばらく行くとついに直線は終りを迎え、運命の交差点にさしかかる。体育館は右折。
前を行く少年は… 右折!
続いて10メートル離れて自分も右折。
すると少年はちらりと振り返ってさらなる焦りを見せた。
「えっ、まだついてくる?」そんな声を聞いた気がした。少年としても、変なおじさんが付いてきているけど、実は何かに遅刻しそうで急いでいるだけかもしれないという方向に一縷の望みを託していたのかもしれない。
でも、この交差点を同じ方向に来るってことはやっぱりオレなんだ!と思っていたのかは分からないが、そういう顔だった。
でもわるいけど、こっちとしても誤解は解きたい。勝ちたい!そして少年と分かり合いたい!

すると、少しの上り坂に差し掛かったとき、ついに少年は速度を緩めた。ついにスタミナが尽きたらしい。
!!!追いすがるおじさんを不安そうに見る少年A、息も絶え絶えのおじさんは、これだけ自分を追い込んだ少年に畏敬の念を示し追い抜き際に飛び切りの笑顔で「自分、早いなー」と声をかけた。
そして彼を抜き去り体育館まで全力で漕いだ。大人の力を見せつけんばかりに。

もうすぐ体育館の入口に差し掛かるというところでふと後ろを見ると、なんと少年A、再び全速力で迫ってくるではないか!しかも今回はとびきり笑顔! 我々二人の間になにか特別なリンクが生まれた瞬間だった。

彼が全力で追ってくるのならこっちも全力で!と思っている間に体育館の入口についてしまった。
もう彼とのレースもこれでおしまいか、と残念に思いながら体育館の道へ入る。
そして後ろを振り向くと、少年が道をかけていくところだった、超笑顔で!
我々はどちらからともなく、笑顔で手をふりあった。少年Aは、自転車に乗りながら片手を大きく振って「バイバーイ!」と叫んでいた。
まるで友達だったかのように。


その後、友達の下調べミスで、実は試合はとなりの市の体育館だったということが発覚し、30分もかけてきた道を帰らなければならなくなることはまた別の話。

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