家の近くから大学まで先生用のバスがでていることを発見してから一ヶ月。
毎日毎日誰と話すわけでもなく一人で、授業で使う教材とにらめっこしながら後ろの方の席でちょこんとさみしく座っている30分の通勤時間。
でもどうやらそれも今日で終わりを告げることになりそうだ。
バスを使い始めの一週間は転校生の気分だった。
褐色のおっちゃんおばちゃんらの中でひとり、学生風の東洋人が乗っている。このシチュエーションにやつらははじめ「おっ、なんだあいつは」みたいな目で一瞥したあと、何もなかったように他の先生たちと話し始める。そしてたまにこっちをチラ見してまた話す。
「ねえあの中国人は何?学生はこのバスに乗ったらダメなのに」的な会話が交わされていたのかは定かではないが、まるで敵扱いだった。だれも話しかけてこないし、運転手も降りたいところでおろしてくれなかったり。
しかも隣の席に誰もっすわってこないので、混み始めてもいつも隣の席は空いているという窓際族状態だった。
でも今日のバスは違ってた。
始まりは後ろに座ってきたカビールさんの一言。
「すみません、日本人ですか?」
パーフェクトな日本語イントネーションで放たれた言葉にびっくりしながらも
「あ、はい。」と答える。
後に続く日本語での自己紹介を聞いた後に、もしやこの人は日本で勉強したことがあるのかと思い聞いてみると、やっぱり横浜国立大学でPh.Dをとったとのこと。
うちのインスティテュートにいるベンガル人の日本語の先生のだれよりも流ちょうな日本語を話すベンガル人を見て、ベンガル人も勉強すれば日本語はなせるようになるんじゃん!と、少しやる気もいただいた。
いつも一人で寂しかった上に日本語で話しているので、うれしさ倍増。いろいろはなす事もあったのだが、「エアコンを買うべきか買わないでおくべきか」で10分ぐらいノンストップで話をした。
そのあとすぐ、バス停で乗ってきた50ぐらいのおっちゃんが、日本語で話している二人を見て話しかけてきた。
そしてそこから日本語祭りが始まることに。
「スミマセーン!日本人デスカ!?」
テンションが高いこのおっちゃんは日本で勉強するために日本語を習ったことがあるそうで、ほんの少しだけ日本語が話せるみたいだった。
でもあんまりはなせないので、知ってる日本語を全部並べてるだけなのだけど、テンションが以上に高いし声もデカイ。
このおっちゃんの声を皮切りに、俺も私も知ってるぞといわんばかりに、バスのあちらこちらで日本語が飛び交う飛び交う。
「アリガート!」
「スミマセーン!」
「コニチワ!」
その波に乗じて新たな日本語話者2人が「俺も話せるんだぜ」と、話しかけてくる。
奴ら二人も日本の大学で勉強したらしい。
結局バスが大学に着くまで、日本語づくし+名詞大量ゲットという時間を過ごすことになった。
窓際から一気に主役。
でもベンガル人、話しだすと止まらないから明日から心配。